しゃにむにGO 完結

マンガを読んでいると、時々その世界にいるかのような錯覚に陥る事があります。

年齢を重ねるごとに、そういった感覚を覚える作品は少なくなって来ているのですが、世界に入り、感情を共有できる数少ない作品の一つが、しゃにむにGO というテニスマンガです。

この しゃにむにGO は、高校テニス界を描いた作品で、同時期に人気を博したテニスの王子様とは違い、現実離れした必殺技や超高校級の選手が何人もでてくるわけではなく、高校生活やテニスを通じて登場する人物の、人間模様や成長過程、プレイヤーの心にスポットが当てられています。少女漫画なので恋愛の要素も含んでいますが、表に出過ぎずに良い清涼剤になっていて、登場人物が過ごす日常が、とても読み手に近い場所で表現されています。

僕は、高校時代に3年間テニス部に所属していていました。(引退の早い高校テニスでは、実際にプレイしていた時間は2年強)選手としてはそれほど強いプレイヤーではなかったけど、コートに入りボールを打つ楽しみや、自分の狙ったところにボールが入る喜びや苛立ち、試合前の奇妙な緊張感や、勝敗に一喜一憂したこと。部のメンバーと同じ時間を共有したというバックグランドを持っていますが、このマンガを手に取る度に、体がうずき、熱くなりました。

それは、テニスを中心とした生活をとてもリアルに再現している。ということなのですが、しゃにむに の中では、臨場感ある試合展開もさることながら、コート上の熱、プレイヤーの汗、ラケットの角度、観客の鼓動、そして時折訪れる静寂を、現実世界のように作中随所に再現させています。テニスをしないという作者の羅川さんは、テニスを、おそらくいろんな媒体や、現場、プレイヤーを通じて、ものすごく勉強されたに違いない。と作品を読むたびに感じました。また、羅川さんは「赤ちゃんと僕」などでおなじみの作者ですが、とても繊細な人物描写をする方です。精神面が強く影響するテニスという競技において、しゃにむに に登場するプレイヤーの心の葛藤がまた、テニスというスポーツを色々な角度でとらえ、魅力的な物語にしています。

その しゃにむにGO がとうとう終わりました。単行本にして全32巻。31、32巻は試合展開をノンストップで見てもらいたかったということで、2冊同時刊行。高校三年間をすべて描ききった、最後の最後まで手に汗握る感動的な展開でした。

単行本を手にしてから約10年。新刊が出るたびに物語が放つ熱気と、繰り広げられるテニスに、時には観客として、時にはプレイヤーとして、試合の緊迫感や喜びに素直に感動して、ポジティブに読み続ける事ができました。ほんとうに楽しかったです。

また一つ、大好きなマンガが終わってしまったという寂しさと、そして今やどこか懐かしい思い出となったテニスに浸る事ができた事。連載開始から足掛け10年以上もテニスが持つ面白さや魅力を最後まで届けてくれた作者の羅川真里茂さんに、感謝の気持ちを届けたいです。

しゃにむにGO (1) (花とゆめCOMICS)

しゃにむにGO (1) (花とゆめCOMICS)


5/25 少し文言修正/追記しました。