水曜の朝、午前三時

水曜の朝、午前三時 (新潮文庫) after six
水曜の朝、午前三時   paris match 「after six」
読書というのは不思議な物で、何を読みたいか、どのような状況や人物に感銘を受けるか、というものはそのときの気分によるところが大きい。

さらにいうと、読み手が蓄積している人生の経験が、バックボーンとして作品中に投影されることは珍しくない。

本書、「水曜の朝、午前三時」は、書店で児玉清の推薦文が目に留まり購入したものですが、感情的に泣きたいと期待して購入した本です。

45歳でこの世を去ろうとしている直美が、自分の半生をテープに残すところから始まります。

これまでの人生を振り返るというと、後悔や絶望というキーワードで暗鬱なイメージをもっていましたが、どうでしょうか、登場人物から感じるとても暖かく、情熱的な思いが伝わってきます。両親、恋人、子供への想いが恋愛感情として鮮明に綴られています。

児玉氏の推薦文どおり、読み薦めていくうちに、心地よく涙を流せました。心が潤います。

僕が自分の人生を終えるときには、こんな情熱的で、忘れられない思い出、宝をたくさん見つけていたい。そんな人生を歩んで生きたいと思わせる作品でした。

Paris match、「after six」はBGMとして聴いていた音楽です。
秋に移り変わるこの季節と、本書の情景にマッチしました。

また、いつか自分の心境が変わったときに読み返したいと思わせる作品です。